特殊詐欺に使用される電話番号について

IP-PBXなどの電話システムを扱う上で、最近避けて通れないのが「特殊詐欺」になってしまっています。この関係で様々なデータなどを拝見する機会があるのですが、一般的には少々誤解があるようなので、客観的なデータを見ながら状況をご紹介したいとおもい筆を執りました。

特殊詐欺の現状

「特殊詐欺」と一口に言ってもいろいろな種類があるのをご存じでしょうか?

一応、「特殊詐欺」の定義については、警察庁のホームページで紹介があります。種類には、代表的な「オレオレ詐欺」に始まり、預貯金詐欺、架空料金請求詐欺、還付金詐欺、融資保証金詐欺などなど、警察の定義では10個に分類されています。

これらの共通の定義は、「非対面」で詐欺を行う手口を指しています。一般的な詐欺(詐欺に一般もへったくれもないのだが・・・。)は、対面で相手を言葉巧みにだまして金銭を得る。ということらしいので、これらを非対面で行うものを「特殊」としているのかと思います。

このような「非対面」で行う詐欺のため、相手とやり取りする手段として「電話」やLINEなどのコミュニケーションツールが使われています。

特殊詐欺の手口は日々巧妙化しているため、被害額は増加の一途をたどっています。

ここからは、警察発表の「特殊詐欺認知・検挙状況等(令和5年・確定値)について」という資料をもとに話を進めます。検索などでもデータが出てきますが、どうもPDFに直接リンクされてしまうため、ここでは、過去のデータも一覧されているページにリンクを張っておきます。月次で新しデータが出てきますので、こちらを見れば状況も更新されるかと思います。

さて、資料の冒頭には令和5年の被害額の状況が紹介されています。

令和5年(2023年)は、総額452.6億円の被害です。月換算でだいたい39億円、1日当たり1.2億円の被害という言ことになります。

手口別でみれば、一番多いのは、架空料金請求詐欺で約14億円で、次にオレオレ詐欺で13.3億円となっています。

特殊詐欺に使用されている電話番号

資料では、被害額に続いて実際に現金が持っていかれる方法の推移や高齢者が特殊詐欺にあっている認知件数などの紹介が続きますが、今回ちょっと注目したいのは、使用されている電話番号の種類です。

資料では11ページに「トピック4」として「被害に遭わない環境を構築する」・・・・・、と紹介されているところに「特殊詐欺に犯行利用された番号種別の推移」というデータが紹介されています。抜粋してみましょう。

この辺いろいろ誤解があるなー、と思って最近見ています。一部の新聞社の報道記事では「050番号」をやり玉に挙げていたりしますし、いわゆる「転送電話」というものをやり玉に挙げていたりしますが、現時点で特殊詐欺に一番多く使用されている電話番号は「国際電話」であることは間違いありません。全体の65%になります。

「怪しい番号」とされている050番号は全体の21%、安心といわれる固定番号は全体の11.3%です。

「転送電話」は、050も固定番号もあるためその割合は何とも言えませんが、転送電話は050番号または固定番号を着信または発信で転送しているため、少なくとも050番号や固定番号の一部となるため、国際電話からの被害に及ぶことはありません。

むしろ、050番号からの特殊詐欺被害は下降傾向のため、やや安心に傾いているとさえ言えます。

「050は怪しい」と書かれている記事などは、一定の根拠をもって書かれているはずなので、それはそれで尊重すべきですし、全体の20%を怪しいというかは見解が分かれるところなので、ここでは言及しません。事実としてこのような傾向になっています。

050番号とは

ここで050番号とは何かをご紹介ておきましょう。

日本で使われる電話番号にはいくつか種類があります。この辺は、総務省の「電気通信番号制度」のホームページに紹介されています。

見てみると、実に多くの番号種別があって、これを一手に総務省が管理し、必要な数を電話会社をはじめ必要な事業者に割り当てています。

この中に「特定IP電話番号」というのがあり、これがいわゆる「050番号」というものです。

では、何が「特定IP」なのでしょうか?

この辺は、「電気通信番号計画」や「電気通信番号規則」などを紐解いていく必要があります。(電気通信番号制度のページの下の方にリンクがあります。)

ざっくりと、誤解を恐れずに紹介すると以下のようなものになります。

  • 電話交換機と電話機の間は「インターネットプロトコル」で接続する。
  • 電話交換機と電話機の間の通信品質は、一定基準を満たすこと。
  • 地域に縛られずに番号を使用できる。

「インターネットプロトコル」とありますが、これは「インターネット」ではありません。ごちゃごちゃしていますよね。インターネットで使用されている通信仕様は、技術的には「インターネットプロトコル」という方式を使っています。この方式は、国際的に標準的な通信方式なので、閉じた環境の中で通信をする場合でもこの通信方式は使用できます。最近の電話会社などでは、電話会社内の通信方式としてインターネットプロトコルを使用するようになってきています。この電話会社内に閉じたネットワークは、インターネットとは分離されていて、端から端まで電話会社が管理しているため、一定の通信品質を維持できます。

というわけで、050番号については、インターネットプロトコルを使っているけど、ちゃんと管理されたネットワークの中で使うので、通話品質はちゃんと保持されていますよ。という番号になります。

これだけ見れば、普通の固定番号と変わりない様に見えますが、050番号の特徴は、特定の地域や場所に縛られず使用できる点が大きく異なります。また、通信路にインターネットプロトコルを使用しているため、その一定の基準内で自由に番号を持ち運べるため、利用時の自由度が高い点が特徴です。

これらの点から、法人などでは、代表電話などで使用されるケースも増えてきており、当社も050番号を代表電話として使用しています。

050番号は怪しいのか?

では、なぜ、050番号は怪しいと言われるのでしょうか?

先ほどのグラフを見直してみましょう。令和5年3月ごろを見ると050番号からの特殊詐欺は2,196件となっていて、このころは国際電話からの特殊詐欺も下火だったことがわかります。

国際電話からの特殊詐欺が台頭してくるのは、このあとの令和5年6月ごろからです。

逆に言えば、それまでは050と言えば特殊詐欺みたいない状態なので、これだけ見ると「まぁ、そうだよね。」ということになります。

この3か月に何があったのでしょうか?

実は、令和5年4月には、改正携帯電話不正利用防止法施行規則というものが施行されており、この改正の中で050番号契約時の本人確認が義務化されました。

一部の電話会社では、これ以前からも特殊詐欺対策として、犯罪収益移転防止法に沿った本人確認を行っていましたが、これが義務化されることになりました。

この本人確認の義務化により、特殊詐欺グループは050番号を入手しずらくなったため、新たな番号獲得手段として国際電話に流れたと思われます。

それでも、050や固定電話からの特殊詐欺がなくならないのは、特殊詐欺グループが偽造された本人確認書類を使用していたり、正当に契約した050番号や固定電話番号を特殊詐欺グループが買い取って使用したりしているかと言われています。この辺は確かな情報は発表されていないかともいます。

さいごに

特殊詐欺に使用されている番号は、大別すれば、国際電話番号、050番号、固定電話番号ですが、050番号と固定電話番号は、日本国内で入手しないといけません。このため、電話番号を獲得するときに、日本の法律等で厳しく本人確認がされることが義務づけられており、これによって、これらの番号からの特殊詐欺はある程度抑制できています。

一方で、国際電話番号は、海外で番号を取得できるため、日本の法律はおよびません。海外の電話環境は、国ごとに異なるため一概に言えませんが、日本のように発信元番号の詐称をしないように義務づけているところは多くありません。逆に、海外でIP電話を使用し、発信元番号を詐称することは、詐欺に使用するだけでなく、一般的な営業電話の環境などでは行わており、これをつかって、日本に詐欺電話をかけてくることが多発しています。

日本の法律が及ばない以上、電話会社や業界団体が、関係各所と協力して対策を打ち出す必要がありますが、なかなか良案が出ていないのが実情です。

現状は、国際電話からの着信を行わないように対策するしかありません。

そこで、国では「国際電話不取扱受付センター」を開設し、国際電話からの着信をブロックすることができるようにしています。

Webからも申し込みができるので、高齢者の親族がおられる方や、国際電話の着信がウザいひとは、登録してみるとよいかと思います。

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